弐.用語解説

神道だけにとどまらず、宗教というものには様々な固有名詞が登場する。
その数は膨大で、とても語りつくせるものではないかもしれない。
だが、宗教を理解するにおいて、これら用語の翻訳は重要な意味を占める。
ここでは神道の重要なものに的を絞り、解説を行うこととする。


あ行

天津神・国津神 / 荒魂・和魂 / 一ノ宮 / 産土神

か行

神楽 / 祈年祭 / 現世利益信仰 / 狛犬

さ行

斎宮 /  / 地鎮祭 / 注連縄 / 神使 / 摂社・末社

た行

託宣神 / 玉串 / 鎮護神 / 鎮守神 / 鳥居

な行

新嘗祭

は行

 / 日吉・山王信仰

ま行

御饌 / 神輿 /  / 幣帛

や行

ら行

わ行


天津神(あまつかみ)・国津神(くにつかみ)

高天原に住む神と、天孫降臨時に天から地上に降り立った神およびその子孫を総称して
「天津神」という。
その中において、宇宙を創造した五大神格を「別天津神(ことあまつかみ)」という。

天孫降臨前から存在していた土着の神を「国津神」という。

アマテラス大神は天津神、オオクニヌシ神は国津神の代表格である。

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荒魂(あらみたま)・和魂(にぎみたま)

荒御魂・和御魂とも。

日本の神は、基本的に二面性を持っている。
一つは荒々しく、獰猛で、祟りや災いを引き起こす面。これを荒魂という。
人々は古くからこの怒りを静めるために供儀(供物を神にささげる祭り)を行ってきた。
もうひとつは温和で慈愛に満ち、人々に平穏をもたらす面。

また、和魂は「幸魂(さきみたま)」と「奇魂(くしみたま)」の分類があり、
運によって幸運をもたらすのが幸魂。
神の奇跡や神秘を直接に及ぼすのが奇魂とされる。

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一ノ宮(いちのみや)

地方のもっとも有力な神社に対する呼称。
国司が任地に赴任すると、まず最初に当地の主要な神社を参拝することが
一種のしきたりとなっていた。
このとき、有力な神霊から順にめぐるのが常で、一番目に参拝する神社を一ノ宮、
二番目に参拝する神社を二ノ宮、三番目に参拝する神社を三ノ宮、以下……
という言い方が起こり、定着したもの。

制度的なものではない。

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産土神(うぶすながみ)

一般的に氏神(うじがみ)と呼ばれる。
産土とは、その人が生まれた土地のこと。
先祖伝来の地に宿っている神(鎮守神)を、自らの守護神として信仰する。

これは、他の土地に移ったときにもついてくる。

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神楽(かぐら)

祭りにおいて、神迎えをし、神を慰める(神への服属を表す)ことを目的とした歌舞。
神楽の舞人は、しばしば手にや剣をもって舞う。

神を呼ぶためには依り代となる体は『清く』なければならず、
『清い』とは雑念のない無心の状態を指した。
そういう状態を作り出すために舞いが用いられたと考えられる。
舞いそのものは芸能ではなかったが、その舞いを模倣するところに芸能が生まれたとみられる。

神楽は大きく分けて、宮廷や伊勢神宮などで執り行われる御神楽と、
巫女舞のような民間の各社などに伝わる里神楽がある。
特に里神楽は様々な形で全国的に広がっており、その伝承形態において

@  巫女神楽
A 出雲流神楽
B 伊勢流神楽
C  獅子神楽

の四つに分類されている。

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祈年祭(きねんさい)

祈年の祭り(としごいのまつり)とも言う。
祈年の『年』は『稔』に同じで、穀物の豊作祈願を意味する。
宮中では二月十七日に執り行われ(民間では前後する)、
五穀豊穣と皇室、国民の繁栄を祈願する。

秋の新嘗祭(にいなめさい)とは対を成す。

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現世利益信仰(げんせりやくしんこう)

繁栄、無病息災、子宝、合格祈願、交通安全等の当面の具体的な幸福(欲求)を
神仏の霊験によって解決、救済してもらおうという信仰。

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狛犬(こまいぬ)

神社の入り口に置かれる一対の像。
神域の守り神とされる。
狛『犬』と書かれてはいるが、犬ではなく獅子である。
高麗から、獅子を神域の守り神として据える風習が伝わった際、
『こうらいのいぬ』=『こまいぬ』として、今日に至るまでこの習わしが残っている。
また、稲荷神社の狐のように、その神社の神使の動物を狛犬とする場合がある。

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斎宮(さいぐう)

『いつきのみや』とも読み、斎王(さいおう)や斎主(まつりぬし)とも言う。
伊勢神宮において天照大神に奉仕するため、
天皇が即位するたびに占いによって選ばれる未婚の内親王(皇女)。
この風習は崇神(すじん)天皇の時代から、後醍醐(ごだいご)天皇の時代まで続いた。
その後は廃絶され、祭主(まつりぬし)がその役目を担っている。

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榊(さかき)

神の木、神に供される木と表される、玉串などに使われる常緑樹。ツバキ科。
榊のない寒冷地域では、同じ常緑樹のモミや杉などが使用される。

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地鎮祭(じちんさい)

建物を建築する場合に行う儀式。
土地の神(鎮守神)に対して、人間がその上に建物を建てる非礼を詫びる真心を示し、
更にその神の加護によって、家に災いが起きぬよう、怒りを鎮める祭礼。

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注連縄(しめなわ)

神社の鳥居、社殿、斎場などに配置されている、藁縄(わらなわ)に紙垂を付けたもの。
一般的には神域、神木などの神聖な場所やものへ、
人間がみだりに立ち入ったり触れたりしないように張られている。

家庭では、正月の注連縄のように、悪霊や災厄を防ぐために使われる。

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神使(しんし)

文字通り、神の使者(代理)を表す。
一般的に知られているのは、神の使いの動物(眷属、霊獣)で、

伏見稲荷大社の狐
日吉大社の猿
春日大社の鹿
大神神社の蛇
熊野三社の烏
出雲大社の鶺鴒(せきれい)
三峰神社の狼または山犬

などがいる。

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摂社(せっしゃ)・末社(まっしゃ)

神社の境内には、主祭神が鎮座する本社の他、幾つかの社に神が祭られていることが多い。
こうした小祠のことを摂社、もしくは末社と呼ぶ。

摂社とは、本社の主祭神の荒魂、縁故のある神(后神、御子神)、
あるいは古くからの地主神を祭る社のことで、本社に準じる霊格を持つと考えられている。

末社は枝宮、枝社とも呼ばれ、本社に付属する小さな社のことで、
大きな神社の有力な神を勧請して祭っていることが多い。
以上を境内社というが、そのほか境内の外に祭られている末社もあり、
これは境外社と呼ばれる。

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託宣神(たくせんしん)

人を神懸りして、重要な天の最高神の意思を表す機能を持つ神。
神功(じんぐう)皇后に神懸かりして神託を下した住吉三神(あるいはコトシロヌシ神)
などがいる。

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玉串(たまぐし)

幣帛のひとつで、に紙垂(かみしで)を付けたもの。

玉串を神前に捧げることにより、恭順の心を表し、神との繋がりを確認する。
神に玉串を捧げる儀式のことを「玉串奉奠(ほうてん)」と呼ぶ。

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鎮護神(ちんごしん)

広義では守護神のことであるが、主に国家鎮護の神、都城鎮護の神といった風に用いられる。
国土のある特定の地域を守護する機能を有す。

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鎮守神(ちんじゅしん)

本来は村などの一定の地域を守護する神のことである。
新しい家を建てるときに執り行われる地鎮祭も、この神を祭るためのものである。
今日では一般に産土神(氏神)と同じ意味で用いられるようになっている。
いずれも広い意味で、人間の生活を守護する神である。

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鳥居(とりい)

神社の入り口に建てられ、そこから先は神域であることを示す、目印となる。
神域へ入る「人間のための入り口」。

様々な様式があるが、四本の柱を組み合わせた簡素なつくりの神明(しんめい)鳥居系と、
仏教の影響を受け、装飾的な明神(みょうじん)鳥居系に大きく分類される。

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新嘗祭(にいなめさい)

穀物が収穫される秋に行われる祭り。
新穀を捧げて神に感謝の意を表す。
春の祈年祭と対を成す。

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袴(はかま)

着物の上にはく、腰から足までを覆う、ひだのある衣服。

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日吉・山王信仰(ひえ・さんのうしんこう)

滋賀県大津市の日吉大社(日吉神社)を総本山として、全国的に広がっている信仰。
平安時代以降、天台宗の信仰と共に各地に勧請され、広まった。

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御饌(みけ)

神に捧げる食物のことで、幣帛のひとつ。
御饌には新鮮な生のまま神前に供える生饌(せいせん)、加工した熟饌(じゅくせん)とがある。

本来、食物の恵みを神に感謝する行為であり、神事などでは、
神の恩恵にあずかる意味から、捧げたものを必ず氏子一同で食する。
神棚に供えた食品や飲物もこれの一種である。

品目としては、御神酒、水、塩、穀類、餅、魚介類、海草、野菜、果物などが主。

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神輿(みこし)

神霊の乗り物のことで、神が遊行(神霊が本殿から仮宮に移動)する際に使用される。
元々は高貴な人の乗り物である御輿を、神の乗り物に見立てている。

人間が神と共にあるように、重い神輿を多数の人間が一段となって担ぎ、
その労苦によって神に感謝を捧げる意味を有する。

時代と共に豪華絢爛なものになっていっており、
最近では荒くれ男の楽しみになっている感がある。
もっとも、これは神輿を激しく揺さぶる(これを神輿を「揉む」もしくは「ねる」という)ことにより、
神の威光を盛り立て、人間と神との一体を象徴した、神聖な行事である。

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禊(みそぎ)

水を使って穢れを祓い清める儀式の一種。
そのルーツは、神話でイザナギ神が日向(宮崎県)橘小門(おど)の阿波岐原の海に入って
黄泉の国の穢れを洗い流したことに因む。

本格的なものは、神職が川や海に入って行う。
神社にある手水は、禊の簡略化されたものである。

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幣帛(みてぐら)

『へいはく』とも言う。
神を喜ばすための供物を意味し、字義は神前に奉納する木綿や絹などの布(帛)のことで、
古代においては、神に対する最高の供え物のひとつだった。

御饌、幣物(へいもつ)、玉串がその代表的なものである。

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